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コクピの苦い思い出(5)


俺の呟きに兄貴たちがびっくりした顔でさっとこっちを見る。
俺は兄貴がもうこれ以上苦しんで欲しくなかった。自分を『演じ』続ける姿を見たくなかった。
…正直、今まで俺は兄貴を勘違いしていた。ただの幼女好きだとしか見てなかった。
それがどうだ、兄貴はちゃんと一人の人間(もとい、曲か)を愛する事さえできるじゃないか…。

ミラージュ「兄貴は勘違いしてる。どんなに結果的にいやな思い出になろうが、
    一旦兄貴が強く想ってしまった以上、その気持ちは消えない。
    今の兄貴は、ただ逃げてるだけだ。逃げてるだけじゃ、何も変わんねえよ。
    しかも同時に、彼女の中の兄貴自身にまで傷をつけているんだぞ。
    彼女を傷つけてまで自分の感情を消し去りたいのか?
    兄貴の彼女に対する感情は、そんなんで消えるほど弱い思いだったのか?」

妙に重い沈黙がしばらく流れた。それを破ったのは、健太の兄貴だった。

健太「…もう夜も遅い。明日は休みだからって夜更かしはいけない。
   そろそろ寝ようか。……それとコクピ」
コクピ「……何だ…?」
健太「せっかくの弟の言葉、無駄にするんじゃねえぞ…。」

そういって健太の兄貴は自分の部屋に消えていった。
俺たちは押し黙ったまま部屋に戻り、すぐにベットに入った。

ミラージュ「電気、消すぞ…」

結局交わした言葉はこれだけだった。
しばらく目をつぶっていたが、やけに今日のことが印象に残りすぎていて寝付けなかった。
…そして、兄貴の啜り泣く声が、一晩中静かな部屋に響き渡っていたのをずっと聞いていた。
兄貴…そんなに辛かったんだな…。その想いがずっと消えなかった。

翌朝、遅く起きた俺はまっすぐ兄貴のところへ行った。
すると、兄貴も何か言いたかったらしく、俺たちは同時に喋ってしまった。

ミラージュ「兄貴、今すぐささきっさに行くぞ」
コクピ「ミラージュ、ささきっさに行くからついてきてくれ」

どうやら兄貴も同じ考えだったらしい。即座に俺は兄貴に訊いた。

ミラージュ「…想いを打ち明ける覚悟ができたのか?」
コクピ「当然だ。お前は俺がそんな弱い感情しか抱いてないと思ってたのか?」
ミラージュ「思ってないさ。…ふう、もう一説得する手間が省けたよ」
コクピ「……それって思ってたんじゃねえのかよ。…まあいい、行こうか」
ミラージュ「…なあ、思いを打ち明けるだけで満足するのか?」
コクピ「健太の兄貴が言ってた通り、俺は彼女の幸せまで崩すつもりは無い。
   …結局は自己満足にすぎないのかもしれない。それでも、伝えたいんだ…」
ミラージュ「……分かった。後は兄貴次第だ。行こう」

道中、兄貴はこんなことを俺に訊いた。

コクピ「…お前は、好きな奴はいないのか?」
ミラージュ「ちょ、…何を言い出すのかと思えば…」
コクピ「なんか最近のお前を見てると当時の俺にそっくりなんだ…」
ミラージュ「えっ?」
コクピ「…お前も、本性はやっぱりエロなんだよ。
   忘れたとは言わせないぞ、お前がアルケーちゃんにしてきた数々の悪戯…」

…そういえばそんな事もあった、と思い出すまで少し時間がかかった。
言われてみると、ここ最近はアルケーに限らず、他の女の子の興味も薄れてるような気がした。
何故だろうか、この一ヶ月間は主にエキストラ部屋での仕事のことぐらいしか記憶に無い。

コクピ「覚えが無い…んだな。こりゃ俺より酷いかもな。
   俺だって最初からタイピが可愛いなんて思ってなかった。いや、意識してなかった。
   言葉でそう言えるようになったのはもうちょっと後になってからなんだ。
   でも、無意識のうちに最初から俺は彼女に好意を抱いてたみたいだった。
   …お前もしばらくすれば、相手が誰か、分かるんじゃないのかな…」

…俺が、無意識のうちに誰かに好意を持っている…だって?
そんな、馬鹿な…。でもそれだと以前の俺との変貌ぶりの説明がつかない…。
なら…一体誰に…?俺は必死に思い当たる名前を全部頭の中に並べてみた…。

……えっ?まさか!?そうなのか!?

とうとう俺はそれらしき名前に当たったようだ。…確かに、これなら時期的にもピッタリだ…。
それに、この一ヶ月間の記憶がなぜエキストラ部屋の仕事ばっかりなのかの説明もつく…。
でも、何故だろうか…。誰か分かっても、好意が意識に上ってこない…。

はぁ…、俺は、本当に兄貴より重症なのだろうか……。


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