知ることと知らないこと・3


ギタドラ市内、ギタドラ図書館。
ここには数多くの文献がある。
まぁ、もっとも来てる人のお目当ては漫画か
子供の自由研究のために間に合わせるための資料か
そのくらいしかないが。

DD5(はぁ、コンビニで立ち読みでもしようかと思ったけど
    結構混んでたしなぁ。あそこクーラー効いてるんだけど
    立ちっぱなしはキツイんだよな、でも週間ナルカディア読みたかったし
    仕方ないからここ来たけど…)

一人様々な考えを思い浮かべる一人の男性。
彼こそがDD兄弟の四男、MODEL DD5である。
彼はかなり異質な存在である。
DD兄弟の誰とも似ていない、奇妙とも言える半漁人のような顔。
その顔なのに似合わないスーツ姿、は仕事の中だけでの話だが
どの服を着ても半漁人の顔に似合うことなんて無い。
そのため、自らの容姿に酷いコンプレックスを受けている。


Herring roe「…あいつキモチワリィよなぁ」
DD5(お前が言うなよ…)

こういったヒソヒソ話はよく耳に届く。
が、今回ばかりはそう思っていられなかったようだ。
本棚の合間を歩いていると、ふと目にとまったある人がいた。

DD5「あ、タイピさん」
タイピ「DD5君じゃない、久しぶりね」


元々、DD5とタイピは同じ時期に仕事がスタートした。
DD5はアンコール、タイピはプレミアムアンコールでの職場だ。
一部の人にしかこの職場はつけず、それだけでも十分に
この二人は職場では立場は良い、が、しかし
タイピとプレイしたい人が続出し、プレミアムアンコールまで
たどり着けなかったプレイヤーが腹いせにアンコール曲の
DD5をやらずに帰ってしまうという事態があった。
そのためか、妙にDD5は内向的な性格になってしまった。


DD5「えっと、『ギタドラ大辞典』?」
タイピ「ええ、これには、ギタドラの曲や用語
   そして、コンマイの作曲者のこともあるから…」
タイピは寂しげな顔をしてみせた。
DD5「…まだ探しているんですね、あなたの父さんのこと」
タイピ「ええ、父さんのことは、私が知らなくちゃいけない気がするから」
DD5「どういうことです?」
タイピ「…知らないっていうことは、一番怖いことだからです。
   知ることで、いろんな感情が生まれてくる。
   喜び、怒り、悲しみ、嬉しさ、絶望、希望。
   知らないってことは、そのいろんな感情から逃げているんだと思うんです、私は。
   だから知らなくちゃいけないんです。
   私には、そういう使命があるような気がして、だからこうして
   私は知ろうとしてるんです」

この人は強い人だ。
DD5はそう思った。
自分が知ってしまったら、怖くなってしまうものを
あえて分かって知ろうとする。
自分にそれが、果たしてできるのだろうか?
そう思ってしまうと、DD5の容姿に関するコンプレックスなど
自分が弱かったから、だから気にしてしまったのだと
思えるようになってしまった。

タイピ「すいません、一人で長々と話しちゃって」
DD5「いえ、そんなことは無いですよ。
    ……あなたは強い人なんですね」
タイピ「え?」
DD5「なんでもありませんよ、それじゃあ、また今度」
タイピ「さようなら〜」


思えば、Gf10th & dm9th時代に、半漁人のような自らの姿に
驚き、笑い、嫌悪感を懐く人が多かったなかで
最も早くやさしく接してくれたひとが、彼女だった。
今ではあのような腹いせも無く、良曲として認められた自分。
ふとあの悪くて、思い出のある時代を思い出した。
DD5の容姿のコンプレックスは少し和らぎ、自然と何故か足取りが軽くなった。


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