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知ることと知らないこと・6


ギタドラ市内、外れの某所の喫茶店にて。
コンマイ社、泉大先生こと泉睦奥彦と
向かい合わせになるようにして、かの人。
佐々木博歴史がいた。


少年「ヤッベ!アレ、イズミサンジャネ?マジヤバクネ?」
少女「キャー!ホントダ!ステキー!」
泉「ハハハ。ミンナニハナイショダヨ」
佐々木「泉さん、それ別の人の…」
泉「……すいませんでした、つい、ノリっつか」


ギタドラの泉大先生を知らない人というのは
いないというのが定説なくらいだから
こんなところにその人がいればそういわれるのは
至極当然の事である。

泉(あの少年少女は佐々木さんを知らないのか)
佐々木「で、泉さん。 話というのはですね…」

ランジュ「お待たせしました、コーヒー2つ…ってあれ?」
マーマレード「ヤッベ!アレ、イズミサンジャネ?マジヤバクネ?」
ランジュ「キャー!ホントダ!ステキー!」
泉「ハハハ。ミンナニハナイショダヨ」
佐々木「泉さん、僕もう帰る。帰ります。帰ればいいんだろ!」
泉「ごめん、本当にごめん」
カゴノトリ(あの人、確か今行方不明になってる…?)


そんなおふざけもこめて、あらためて泉は
お酒を飲んだ後だというのにもかかわらず、いつになく真剣な表情をした。
佐々木氏も同じである。



佐々木「で、泉さん。 話というのはですね」
泉「娘さんたちのことかい?」
佐々木「……大先生にはお見通しでしたか」

ふうと一息置いて、佐々木氏はコーヒーを一口飲む。
泉氏はぴくりとも動かない。
かなりというレベルではなく、とても真剣な表情だった。

泉「あなたが退社した理由は、ギタドラ市内の曲、プレイヤーに
  様々な説が飛び交ってますよ。
  アンコールの曲のプレッシャー、短い期間で労力を要するプログレ。
  中には、私とあなたの不仲説もありますよ」
佐々木「全て当たらずとも、遠からずといったところでしょうか。
    ……あなたは僕との不仲説については?」

泉「正直なところ、あなたを羨ましがっていたのかもしれない。
  私の創る曲と、あなたの創る曲のスタイルはまったく逆で
  それに憧れていて、同時に怒りを覚えていたのかもしれない。
  ……そういった態度が、自然と出てたのかもしれませんね」

しばらくの沈黙が続く。
他の客が何か話すざわざわとした音が鳴り響く中なのにもかかわらず
ここだけ、冷たい鉄のように
冷たい沈黙が続いていた。

佐々木「僕も同感ですよ。あなたの言ったことと、ほとんど同じです」
泉「意外ですね、あなたがそう言うなんて」
佐々木「ま、それはともかくとして。
    私の頼みを聞いてくれませんかね?」

………。

泉「まぁ、無理ってわけじゃないですがね」

佐々木氏が一連の頼みを話したようだった。
窓から見える景色がかなり変わっていた。
夕暮れ時であった時間は、もう日が沈んで間もない頃か。

泉「知ってる人に何とか頼んでみましょう」
佐々木「頼みましたよ、むっちゃん♪」
泉「……えっと、それと佐々木さん。
  今更ですが、コンマイ社に戻るつもりはありません?」
佐々木「戻る、のではなく戻れない…んですよ、僕は」

佐々木氏がふぅとため息をついてから
哀しげな表情を浮かべ、淡々と語り始めた。
事実だけ、己が感じた感情という名前の事実を。

佐々木「仮に戻っても、僕の娘、息子達になんて言われるか。
    娘や息子達にどんな顔をしたらいいのか。
    …親が子供をほったらかしてどこかへ行ってしまって
    僕を憎んでいるんじゃないか、そうじゃないんだろうか。
    だから、僕は、僕は!」
泉「単に臆病なだけなんですよ」

感情が高ぶっている。
横で座っているカップルが少し怪訝そうな目でこちらを見てきた。

泉「怖いから逃げている、それだけでしょう。
  逃げたいなら逃げればいい、覚悟を決めて会うならば
  会えばいいだけの話です。
  ……そろそろ私のボウズ達が待ちくたびれてるはずです。
  では、これで」

感情の高ぶる佐々木氏に対して、さらっと一連の台詞
を言い、泉氏は早々に店を出て行った。
一人だけ、残る佐々木氏。

佐々木(逃げたいなら逃げればいい、会いたければ会えばいい、か…)

何も言わずにレジに向かう。
泉氏だって、自分の分のコーヒー代くらいは払っているはずだ。


カゴノトリ「コーヒー2つで…」
佐々木「え? さっきの人が半分払ったはずじゃあ」
カゴノトリ「あの人は『あそこにいるメガネをかけた人が払ってくれる』と言って
    出て行きましたが…」
佐々木(泉さんってば、泉さんよ! このサカナ野郎!!)


ギタドラ市内某所、喫茶店にて佐々木氏の目撃情報があったとか無かったとか。


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